TanaShin(たなしん)です。
 

今日は「山林活用」について。
 

研究対象としているからなのか最近よく耳にするんですよね。

もうすぐ新祝日「山の日」ですし、ここに関する考えをまとめてみました。
 

◼︎ 山林活用の代名詞「林業」

活用というと真っ先に思い浮かぶのが木を伐って出す。

いわゆる「林業」です。
 

山の貯金をお金に変えて市場をつくる山林の活用方法ですよね。
 

昨年から「林業の学習」を進めているのですが、この「林業という山林活用」については知っておくべき事実(歴史や現在のステータス)が結構あることを知りました。知りもせずには飛び込めない。そんな感じです。


学んだ内容を列記する形式でまとめておきたいと思いますので参考にして頂ければ嬉しいです。

それでは行きましょう。


● 昭和30年代までの中山間地域には「農業」と「林業」がバランスよく存在していた。
● しかし、昭和40年以降、林業は衰退し、中山間地域から消えた。 国土のほとんどが中山間地域なのに、です。

 

この林業消滅問題の原因は「施工されてきた林業政策」にあります。
 

● 戦時中(昭和20年代)に乱伐。これで山から木が結構なくなりました。

● 戦後(昭和20年以降)復興需要で木材需要が急増。

「短伐期皆伐施業(50年皆伐)」を政策のコアにして皆伐を一気に実施。これで木材需要を満たしにかかる。ここでも山から木が結構なくなりました。

● けれど、供給が追いつかず木材が不足し価格は高騰。

● 価格は高騰するのに、山に伐る木が無い事件が発生。

● そこで、政府は拡大造林政策(成長の早い人工林:スギ/ヒノキを植林)を実施。

● だけど、いくら成長が早いとはいえ建築用材として使えるようになるまでには、50年以上かかる。

● なので、やっぱり木が無い。

● このままでは供給が追いつかないので、昭和39年に木材を完全に自由化。 これで安い輸入材が市場になだれ込むようになるが、国産材の需要はほぼ消滅。(昭和30年代は9割需要だったにもかかわらず3割程度に)

● こうして、林業者や製材業が激減(伐る木がないのだから当たり前)。 残った製材所も外材(輸入材)中心となり「皆伐施業化」が林業の衰退と輸入材拡大の最大の原因。



さらに、地域から林業を消滅させた大きな理由がもう一つあります。


● 昭和40年以降に展開された「所有と経営(施業)の分離政策」です。大規模な2次産業型(工業型)林業が近代林業であるという考えが主となり、山林所有者の9割を占める小さな山林所有者は実質的に除外され、経営は森林公社・森林組合に集約。この結果、山林所有者と地域住民から林業が遠ざかり、生業から消滅。

● ちなみに、拡大造林をされた人工林ですが、放っておけば良い木に育つわけではなく、下刈りなどの保育作業や適度な間伐、搬出が必要です。

● そして、当然ながら様々なコストがかかるのですが、山林の未来を見据え地域の林業公社・森林組合は赤字覚悟で山林/森林整備を行ってきました。

● 拡大造林政策から50年の時が経ち、良い木を育てるための「間伐」が多くの山で必要になっていながらも、赤字まみれの不良債権化した山ばかりで、やらねばならない山林/森林整備は補助金頼りなってしまっている。

● 国有林は赤字、各自治体(森林公社)も赤字、個人も赤字。 現在、かろうじて生き残っているのは森林組合は山林所有者が赤字覚悟で払っている施業費と、国や地方自治体から出る補助金のおかげ。


● 平成以降の林業政策の主に置かれている「高性能林業機械を入れた大規模施業」は、こうした赤字状況に対して「生産性を上げる」というアクションなのだが、 高投資(1億円程度)・高コストとなる高性能林業機械は、日本の急峻な山には適さず、ほとんど採算が合わない。

● 導入時と運転時には常に高額補助金が必要となり(補助金産業)、平成23年度から施行された「森林・林業再生プラン」では3~5倍に増額。現場での採算を合わせるようとするあまり、荒い作業道や過間伐による荒い施業が頻発。土砂災害や環境破壊も急増している。

というのが、林業における認識しておきたい事実です。 

これまでの林業政策で「残ったもの」と「失ったもの」をまとめてみました。


(残ったもの)
・国土の半分を占めるほどになった人工林(40年〜50年)
・山林所有者の莫大な借金
・輸入材(合板・集成材)の市場の一般化
・自然環境問題(土砂災害や環境破壊)
 

(失ったもの )
・中山間地域の生業であった林業
・国産材需要
 

見ての通り残ったものは人工林以外いわゆる「負の遺産」だらけ。
「残ったもの」をどのように処理するのか、そして「失ったもの」をどのように復活させるのか。 

山林活用に林業を考える場合に、この視点は外すわけにはいきません。
 

◼︎「自伐型林業」ならば失ったものを取り戻せる

ここまでくると 「じゃあ、もう林業という山林活用は日本でできないのか?」 という質問が上がってくるように思いますが、 答えとしては 「ノー」です。

林業で十二分に山林活用ができます。 

ただし、やり方が今のままだとマズいのです。

稼げる林業として。
中山間地域に雇用を取り戻す林業として。


今、全国にその輪を拡げている「林業スタイル」があります。 

自伐型林業」というやり方です。

これは、僕の山林活用研究の軸にもなっていて、実際に養成講座を受けたり、自伐林家を訪ねてみていますが、この方法は確実に生活の支えとなり、山林環境にも良い。 こうした手応えを得ています。
あとはやるだけ(トレーニング・修行)って感じです。

理論的な部分は過去記事をご覧いただければ掴めると思いますのでこちらからどうぞ。

これは凄い。【自伐型林業】をリアルなメディアとして成長させていきたいと思った。


あと、pskさんも上手にまとめられているので参考になります。 先日、高知県土佐町の自伐林家を訪ねた際には、自伐林家を目指す若き女性(22歳)に出会い、高知県四万十市でも自伐林家として生計が立つようになってきたこれまた若き女性にお会いをすることができました。
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↑ 福祉楽団「恋する豚研究所」で働く若手女性社員が自伐型林業を学んでいる山林。まだ初めて数ヶ月にもかかわらず、ユンボに乗り作業道作りも行っているというのだから驚いた。

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↑ 四万十市の自伐型林業チーム「シマントモリモリ団」が経営/施業を行う山林。自伐型林業のコアになる「作業道」を歩かせてもらった。伐開幅2.5m以内、切り高2m以内の土砂流出や山崩れを起こしにくくする道の作り方は必見。ここで働く若き女性林業家の方はイキイキと話をされていました。

高知・四万十で「自伐型林業」 地域活性化につなげ シマントモリモリ団

少ない初期投資で、女性でもできる自伐林業。

「作業道づくり」
がキーになるのでこれについてはある程度の習熟が必要ですが、林業というアプローチで山林活用するための本丸はここにあると思います。
 

■ 林業以外に「山林活用」はできるのか?

それで重要なのはここだと思います。林業以外の山林活用。

王道じゃない方です。

ぼくは「自伐型林業」だけで日本の国土7割の山林活用ができるとは全く思いません。

雇用を生み出す、中山間地域を再生させる良いソリューションではあるのですが、
実際、日本は急峻な山が多く地域ごとで地質も全然違うので「自伐型林業」がやりたくてもやれない山は沢山あります。

ですから、自伐型林業とはまた別アプローチを考えなければ、この豊潤な資源を使いこなすことは難しいというわけです。これを考えなければ山林から埋める雇用も途中で頭打ちです。

「他にどんな山林活用のアプローチがあるのか?」

実はですね、ここ最近ずーっと考えていまして考えればいろいろ出てくるんですよね。 面白いことに。

賛同してくれる人も周辺に出てきていて、巻き込んで形にできないかと思っているところです。

自伐型林業と絡めての展開もあれば、それとは全く異なるアイデアもあります。
そんなことできるの?みたいなアイデアももちろんありますけど。

昆虫、植物とか山林をマイクロに見始めるといろんな資源があることにも気付くんですよ。

この辺「note」に有料コンテンツとして書いてみようかな(←いやらしい?)
 

■ 最後に

この夏からぼくの山林活用の研究はさらに深まっていき、新たな発想も自ずと出てくると思われます。 

夏の自由研究として楽しんでやりたいと思います。

今後は「山林活用」に関しての座談会とか、ワークショップとか有志でやってみたいんですよね〜。skypeでもchatcastでもいいですし、ご賛同いただける方がいたら是非やりましょう。

こちらからは以上です!