TanaShin(たなしん)です。
 

先日、岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)という集落を訪ねてきました。
 


100世帯270名の過疎地域で限界集落なのですが、この集落は、縄文時代から年間1000人の人が出入りし、霊峰白山への登山口・神社が鎮座する歴史ある場所。移住者は徐々に増えているみたいです。
 

この地の訪問目的は「小水力発電による地域おこし」石徹白洋品店の見学」の二つだったのですが、これらのインプットを薄めてしまうほどの素晴らしい「伝統技術」に出会ってしまいました。


今日はこのお話をしたいと思います。
 

トレーサビリティ100%の建築工房

石徹白洋品店」は営む平野さんご家族が住む母屋とその隣にある工房の2箇所に存在します。
 

ぼくの目を引いたのは2016年4月に竣工したという木造りの工房
農山村の原風景が広がる石徹白集落の中で新材の明るい色が一際目立っています。
 

IMG 2278右が平野さんご夫妻の住む母屋で、左が工房。

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1Fはカフェススペースと、ワークショップスペース。

2Fは野良着などが売られています。
 

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見栄えはさることながら、この建築工房の素晴らしいところが、トレーサビリティ100%だという点。

この話には目から鱗がポロポロでした。
 

使っている木材は、知り合いの杣(そま)大工が山から伐ってきた材(=天然素材の新材)と、近隣の古民家を解体した際に出た材(=古材)のみ。
 

出どころが全てわかるという点でトレーサビリティ100%ということです。
 

釘を一切使わずに組み上げた建築物で、玄関ドア、梁、柱そして床といったように要所要所に古材が使われています。 IMG 2284古材の梁はしっかりと黒光りしており、長いこと使われ磨かれてきたことを物語っています。
新材とのメリハリにうっとり。

IMG 2289階段も石徹白のおうちから譲り受けたものだそう。
床も古材を利用。
使われている建具の多くが古材でした。

2Fは洋品店の店舗スペース。 IMG 2353


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新材は清々しく新しい光を工房に取りこみ、天然の木の香りを充満させる。

古材の床は本当に美しく、人の暮らしの跡がそこここに見えました。
新材にはない長い時代の積み重ねによってできた傷、生活の匂い。
 

新材と古材の融合によって生まれた工房はセンスオブワンダーを感じる他ありませんでした。
 

さらには伝統構法のもっとも伝統構法らしい構造要素である「石場建て」といった伝統技法も使われておりました。 IMG 2292

石場建てとは。

伝統構法の特徴であり、自然と共生する建築のあり方を体現しているのが「石場建て」です。 今の建物にはコンクリートの基礎があり、土台などとしっかりつながっています。

しかし、古民家やお寺などは、石の上に柱が載っているだけで、建物と礎石とは縁が切れています。

これが「石場建て」です。

ジブリ映画の「となりのトトロ」で、メイが孔のあいたバケツで縁の下を覗いていて、チビトトロが縁の下に駆け込んで行くのに出会う場面があります。

床下をのぞいてみれば、ずーっと向こうまで見通せて、柱の足元が石の上に乗っているのが床下の林のように見える、というのが、石場建ての建物の足元の風景です。それが、コンクリートがない時代には、あたりまえの風景だったのです。

綾部工務店
の説明より引用。

この美しい工房建築の様子は洋品店を営む平野薫生里さんが綴るブログに記されてので覗いてみてください。
 

最初は、なんだか素敵な建物で、使うのがもったいない! このまま置いておきたい!と思っていたようですが、 毎日入って風を通して、過ごしているうちに、 もっともっと使いこんで、よりよい家にしていこうと思うようになったそうです。

この工房建築が成立したのは、古民家解体のはなしが近くであったこともそうだけど「杣(そま)大工」の存在が大きかった、とお話をされていました。

「杣(そま)大工」という農山村の伝統的な職業

帰ってすぐに調べてみました。

杣(そま)大工とは、日本古来の木造建築技術をもち、山から木を切り出すところから建築までを行う大工のこと。 山で木を伐ってその場で製材をするという現代建築では考えることのできない職業人です。

伐採現場である、山の斜面に「りん」と呼ばれる台を組み立て、その上に製材する丸太を積み、1本ずつ製材していくのだそう。伐採現場が製材現場なのです。

現代において「製材」というと、帯鋸(おびのこ)製材機を使った製材手法がほとんどで、ごくごく稀に大鋸(おおが)という大きな鋸(のこぎり)で製材することもありますが、杣(そま)大工として原木を製材する際に使うのは、斧とチョウナが主体。

斧とチョウナと鉋(かんな)を使って行う製材でないと、曲がった梁を曲面で仕上げることはできないらしく、古民家の梁で見かける「美しい曲がり梁」や「木の曲面」はこのような行程で作られていたということなんです。製材機や鋸(のこぎり)では出せません。

石徹白洋品店の工房の玄関入ってすぐのところにある「鉄砲梁」がまさにそれ。 IMG 2286見事な鉄砲梁(天然素材)と古材の垂木・梁の組みわせが美しい。

現代の原木市場では売れない曲り木がこのように家の一部になっているわけです。

もう感銘感激です。

木を切ることも製材も設計も大工もできる杣(そま)大工

絶やしてはいけない「伝統」がここにもあることを知りました。

樹杜屋あらべぇ・荒木さん

ちなみに、平野さんが依頼された杣大工さんを見つけてしまいました(笑)

樹杜屋あらべぇ・荒木さんのはつり実演動画も発見!こりゃすげえです。
はつり(斫り)とは、くだく・けずる作業のこと。



ブログも必見ですね。

"ハツリの技で木の家づくり 木造伝統構法研究所"

スクリーンショット 2016 09 11 10 23 29

最後に

荒木さんの想いがひしひしと伝わってきます。
はじめまして。樹杜屋あらべぇです。

自然と共存する日本の生活スタイル、建築文化を通して古くより自然の営みと木の家の生活が密接であることを知ってもらい、一人でも多くの方に木の家に興味を持っていただき、大工の手刻みによる伝統構法の木の家が多く建てられる未来を作る事が私の使命です。

誰にでも伝統構法の木の家は建てられる


森を育む林業家(きこりさん)と木を扱う大工職人の知識と技術があれば木の家は建てられます。

しかし現状、伝統構法で自然素材を使っても石油製品などを使い、素材の組み合わせを間違えれば素材の良さを生かせず、室内環境も人が生活する上で良い状態とは言えずに建てた家も短い耐用年数で解体され産廃として埋め立てる事となり非常に効率が悪く環境にも強く負荷がかかってしまっているのが現状です。

住宅設備も便利になり扱い易くておしゃれなキッチン清潔なトイレに暖かいお風呂短期間というスパンで作っては廃棄に埋め立てしかできない現代の構法の繰り返しでは世の中はゴミで溢れかえり持続的に便利な生活が次世代へ引き継げないと思います。

現在の木の家つくりは問題が多い


未来の日本のために伝統構法の木の家と現代の便利な生活を融合した次世代の為の家つくりをする必要があります。

かつては結(ゆい)と呼ばれる制度があり、集落の住民総出で助け合い協力し合う事で職人だけで行う事による、多大な費用と期間が軽減できました。失われてしまった文化ですが現代こそ必要ではないかと思います。 そんな日本の生活と文化を守る伝統構法の家を作りたい。 木の寿命が尽きるまで何度でも繰り返し使えるそんな家を作りたい。

大工と家つくりをみんなで楽しく行うことでこの森と共に生きる木造建築で日本中を明るく元気にしたいです!! 長く住み続けられ自然素材を使った手刻み伝統構法の木の家を多く建てることで便利な生活を継続的に次世代に引き継げる未来をつくっていきます。
これからの仕事のことを考えると、ぼくは多分この人とつながる必要があります。

そして、自分の家もこの伝統構法で作りたい。
1,000万円くらいあればできるかなあ。

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石徹白の参考情報も添えておきます。

・石徹白の 移住関連ツアー
 
・石徹白の アウトドアツーリズム

いとしろカレッジ

・石徹白子育て移住サイト(私は子育て、あなたはチャレンジ

・石徹白の小水力発電のNHKの動画

・岐阜県にある石徹白地域の民話を継承するための絵本を作りたい!

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今日はこの辺で!

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